芙苑晶の世界 AQi Fzono World

芙苑晶の音楽:
芙苑晶はトランスの元祖?

 

 芙苑晶のファンはもちろんですが、一度でも彼の音楽(とくにソロ・アルバム)を真剣に、最初から最後まで通して聴いたことのある人なら、すくなからず衝撃を受けたという人は多いのではないでしょうか。

 言葉で言うのがむずかしいですが、言ってみれば、「こんな音楽が世の中にあったのか!」というような衝撃です。

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 では、どんな音楽なのか?

 

 一枚のアルバムがまるで映画のように構成されていて、ただ CD プレイヤーに乗せて回すだけで、トリップが始まります。

 1曲1曲飛ばして聞くのも悪くはないですが、できれば、デカいボリュームで、「没入して」最後まで聞いてみて下さい。もしも最初「何これ?」と思っても、聞いているうちにだんだんハマって、いつのまにか思わずトリップしてしまうという人も、多いのではないでしょうか?

 

 これまで、芙苑晶の音楽はジャンル分けが難しいと言われていました。

 電子楽器をメインに使っているので、「エレクトロニック・ミュージック」あるいは「テクノ」と分類されることが多いですが、それでもこの「世界」を表す言葉は、なかなか見つかりません。世界的にもレアと思われるほどの独自のスタイルを持っているからです。

 それは、難しい音楽なのではなく、「型にはまっていないボーダーレスな音楽」だからではないかと筆者は思っています。

 実際に聴いてみるとわかることですが、美しいメロディなんかもかなり出てきます。ファッションショーで使われたりとか、中には、シングルカットされ、クラブヒットになったというような曲があるのを見てもわかるように、けっこうキャッチーなメロディ、4つ打ちのキックなどを使ったポップな曲もあるし、親しみやすい音楽なのです。

 ようするに、解説のいらない純粋なエレクトロニック・ミュージックです。

 

 しかし・・・ジャンル分けみたいな話を言うと、人によっていろいろ意見が分かれたりします。

 しかし、これは筆者の考えですが(また、昔からの芙苑ファンには似た考えの人もけっこういるようですが)、芙苑晶とは、大きな意味での「トランス」音楽のアーティストではないか、と思っています。

 なぜそう思うかと言うと、たぶんですが、宇宙なイメージ、神秘的なイメージ(瞑想的、内省的・・・・とか)が強いからではないかと思います。
 昔誰かが書いてましたが、「サイケデリック・エレクトロニカ」という表現が合いそうです。
 そういった意味で、テクノよりはトランスという言葉が雰囲気的に合うように思います。

 それはたとえば、実際に、幻覚植物研究所(Psychedelic Plants Research Laboratory)(アメリカ)やファー・イースト・アシッド・ハウス・クワルテット(日本)のようなバンド・プロジェクトの作品においてまず現れています。大ざっぱにはテクノですが、今聴くとそれらは「トランス」(とくにサイケデリック・トランス)に近い音楽性なのです。

 しかしながら、ファンならご存知のように、芙苑晶の業績、少なくとも彼がこれまで発明・開拓してきた手法というのは、実はトランスのジャンルにとどまらないものです。

  芙苑晶のソロ・アルバムの多くに冠されるサブタイトル「シンセサイザー・シンフォニー(Synthesizer Symphony)」、これは芙苑晶の特許とも言われる新手法だ。それは単なるクラシックと電子音楽の融合にとどまらず、テクノ、ハウス、トランス、アンビエント、ロック、前衛音楽etc. といった音楽ジャンルを、電子楽器の自由性と結びつけ、まるで映画のように異世界を描写するといった革新的な手法であり、芙苑晶の最大の発明と言われるものの一つです。
で、これとアンビエントを融合したのがシンフォビエント(Symphobient)、テクノのスタイルに置き換えたのがシンフォニック・テクノ(Symphonic Techno)です。

 こういった複雑で混沌としたように見える要素が合体して、「芙苑晶の音楽世界」を形作っていると言っても過言ではないでしょう。

 

ではかんじんの芙苑晶のソロアルバムはどうでしょうか?

 「トランス」を狭い意味にとらえて、今巷で言われている「トランス」に当てはめようとすると、違う感じもします(そういう曲もアルバムの中にはけっこうあるのですが)。いろんなタイプの曲があるからです。

 近頃日本で「トランス」というと、アップテンポの4つ打ちキックにシンセサイザーのミニマル・リズムがかぶるあのタイプの音楽という認識が やたら広まってますが、芙苑晶はそういうタイプの曲もあるけども、ダウナー・トランスと言ってアンビエントやクラシックあるいはIDMのような雰囲気を持つユルいトランス(アンビエント・トランス、アンビエント・サイケ、、、等々とも言われる)等を早くから手がけていました。

 しかし、全体に流れる雰囲気は、「トランス」あるいは「アシッド」と言えるような世界です。

 まるで宇宙や異次元空間にトリップするような、カラフルで幻想的なサウンド。

 聴いていると、世界がどろどろに溶けてしまいそうなサイケ感。

 アップテンポの曲では思わずあっちの世界に連れていかれそうです。

 等々、数え上げればきりがありませんが …… 。これらはすべて、いわゆる「トランス」・ミュージックの要素と言えるでしょう。

 実際、芙苑晶のリスナーは、いろいろなタイプの人がいますが、テクノの中で言うと「トランス」寄りの人が多いのです。

 クラウス・シュルツ、ピンク・フロイドなどの「プログレ」系のファンがなぜか芙苑晶のファンとかぶっているというのもうなずける話。

 

 筆者はジャンルにこだわらずいい音楽はなんでも積極的に聴きますが、トランス・テクノはとくに大好きです。しかし芙苑晶のアルバムを聴いたあとでは、コテコテのサイトランスですら、「なーんだふつうのアシッド・テクノ」という感じに聞こえることがあります。

 かといって、それはそれでまた楽しめますが、濃度が違うのです。ここが芙苑晶のすごいところではないか?と思います。

 言ってみれば、並みの「トランス」とは「トリップ感のスケールが違う」ということです。

 ふつうの「トランス」が地球上の旅だとすると、芙苑晶の音楽は宇宙旅行。それぐらいの違いがあります。

 これは芙苑晶の音楽を語る上で、非常に重要な項目だと筆者は思っています。

 

 たとえば、具体例をあげて言うと、ふつうの「トランス」がかかるパーティでは、ドラッグが使用されることも多いようです。

 芙苑晶が昔日本でやっていたファー・イースト・アシッド・ハウス・クワルテットというバンドは、それ系のレイヴで知る人ぞ知る画期的なバンドでした。

 しかし・・・「芙苑晶の音楽でトリップするのにドラッグはいらない」こう言った芙苑晶のファンの人がいました。これはすごく言えていると思います。芙苑晶の音楽の本質を突いているという気がします。

 そう、つまり、サウンドそのものがまるでドラッグか、映画でも見ているように、「別世界ゾーンを体験できる」といった特徴があるのです。

 これは、強調しても強調しすぎではないと思います。

『年代記( Chronicle )』のようなクラシック寄りの作品ですら、それが当てはまります。

 

 そういう意味で、できればいいオーディオで、ヴォリュームをがんがんに上げて聴くか、ヘッドフォンでウォークマンなどで聴くのもいいでしょう。とにかく「ハマって聴く」これが一番です。

 

 ジャンル分けについてもう少し解説しましょう。

 最近日本でファンが増え始めたという噂があり、中には『年代記( Chronicle )』あたりから聞いた人もいて、プログレッシブロック・ファンにも評価のある芙苑晶ですが、実質的には『年代記』のような作品は、芙苑晶のアルバムの中ではむしろ異色の部類に入ります(もちろんそれも芙苑晶の世界の一つなのですが)。

 全体的に通して見てみると、クラシック、ないしはプログレ的な要素もありますが、実質的には早くから広い意味での「トランス・ミュージック」と呼べるような音楽を手がけており、「トランスの先駆者」とも言えるような作品を数々創ってきています。

 とくに、初期(デビュー作)の『燐光( Phosphorescence )』などは、今聞くとダウナー・トランスという感じの神秘的なエレクトロニック・ミュージックです。筆者もそうですが、昔からのファンはこちらのイメージのほうが強いでしょう。

 

 しかし元々クラシック出身の人だったので、アルバムの中にはそれっぽい要素が入ってきています。

『伽藍( Cathedral )』の驚異的な、恐怖を感じさせるようなすごいイントロ、『宇宙論( Cosmology )』の構成・・・、それにどのアルバムにも感じられる独特な重厚感・・・等々、数え上げればきりがない。これはクラシックを勉強していた人にしかできないワザだなあと思うことも多いです。

 しかし、そういうアカデミックな要素だけを音楽に求めて聞くリスナーの人は、きっと失望するでしょう。だから同じクラシックをベースにしていても、テクニックを売り物にするプログレ・フュージョンのような音楽とは対極にある「イメージの世界」「映像的な音楽」だと言えるでしょう。

 そういう意味で 芙苑晶の音楽の本質はそのトランス感覚、トリップ・ワールドにある。筆者はこう思うし、昔からのファンには同感の人も多いのではないでしょうか。

 だから、そっち系が好きな人にはたまらない魅力の音楽ですね(笑)

 

 しかし、反面、世の中には、ジャンル分けで(と言うか頭で)聴く人がけっこう多いのですね。これは悲しいことです。なぜならそういう人は、言葉で音楽を分けて、聞く前に偏見を持ってしまうからです。

 芙苑晶の音楽は、そういう意味では、人によって、また、アルバムによって、いろいろな多様な評価が出るので、偏見を持たれる場合もしばしばあるようです。

 評価がむずかしいと言われるゆえんですが、本来、芙苑晶の音楽は、特定のジャンルの音楽リスナーを選ばない音楽ではないかと僕は思っています。音楽を純粋に好きで楽しむ人なら、誰でも理屈抜きに楽しめる音楽という気がします。

 

今日はこのへんで。
2006・11・27

 
 
 
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Picture : AQi Fzono's Video art "A Guide to Cosmology" (1999).
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